ひとつ屋根の下の愛情論
第8章 学校と無条件の愛
歩きながら、俺は試験範囲をザックリ教えてもらい「後は、明日でいいかな?」と、横沢は駅で別れた。
事件前の俺なら…こんな些細なことで胸踊らせていたのだろうか?
こんな下らない会話で――――“恋”が生まれたり…進展したりするのだろうか?
だとしたら…それは本当に“恋”なのだろうか……
甘い…脳の錯覚なんじゃないだろうか…
もしかしたら、横沢は俺のことを…犯人にも対抗できない弱い男…だと思ったに違いない。
そして、俺が犯人からされた本当の事を知ったら…
気持ち悪い、汚い――――…お前が誘ったんだろ?
と、俺を汚いものを見る目で見るんじゃないだろうか…
もう二度と…可愛い顔で――――笑ってくれないんじゃないだろうか?
「福田くん!じゃぁね!また明日」
と、普通に接する彼女の顔が…スッーと無表情になるのを想像して…背筋が寒くなる。