ひとつ屋根の下の愛情論
第8章 学校と無条件の愛
季節は夏のはじめなのに――――…
俺の心は…凍えそうだった。
「律夏――――…」
俺はどんどん小さくなる横沢の背中を見ながら…律夏の名前を呟いていた。
何でそこで律夏を呼んだのか分からないが――――…律夏の背中は暖かくて…
安心する…
早く――――帰ろう。
俺はくるりと方向を変え足を踏み出した。
あの家に――――…帰ろう…
まだ、俺を縛る…あの家に…
と、その時ポケットにあった携帯が鳴った。
『冷たいうどんが食べたい』
連絡は律夏からだった。
晩飯のリクエストみたいだが…いまのところ俺にはかなりありがたいメッセージだった。
「うどんって…安上がりの男…」
冷凍うどんならパパっと作れる…簡単なメニューに笑えてくる。
『温玉と天ぷらでも付けるか?』
少しでも手間をかけようかと返信すると、
『温玉と揚げ玉――――天ぷらは重い』
と、すぐに返信が来た。
『重いって、おじいちゃんか!』
『バーカ!ギリギリ20代だ!サイドメニューはお前に任せる!
帰りは、いつも通り――――よろ!』
と、一方的に連絡終了を匂わすメッセージがすぐに送られてきた。
俺は『了解』としか返せず…笑った。
良かった――――俺は笑えている。
また…安心した。