ひとつ屋根の下の愛情論
第2章 非道な訪問者
スーツケースをガラガラする音にもなれた頃には、俺はもと来た道を戻りきり家の前に来ていた。
すぐに用事が済むだろうと、スーツケースは玄関の外に置いたまま玄関を開けて家に入った。
さっき“行ってきます”と、出たばかりの家だがなんだか急に懐かしくなる。
靴を脱ぎ、早く見て早く出掛けよう――――と、スリッパも履かずに台所に向かう。
居間を通り――――台所を覗くと、元栓はちゃんと閉まっていた。
「やっぱり――――…思い過ごしか…」
ホッとして、いざ出掛けよう…と、振り替えると!
なんか――――違う?
良くは分からないが…異様な雰囲気に…いつもと違う家の様子に体が強張る!?
誰か…いる?
ふと…そう感じた――――。
「あれ?――――もしかして、律夏さん?」
我が家の鍵を持っていて、自由に出入りできる人を俺は一人しか知らない…