ひとつ屋根の下の愛情論
第12章 沈殿する記憶と思い
しかし、教室は休みの前によりも――――…空気がピリリとして感じた。
すでに受験モードに変化した生徒達が大半で、学園生活を有意義に……と、言う社交辞令は通じなさそうだった。
話題も、夏休みは何処のゼミに参加した…だの、夏期講習でここが重要だと言われた…だの――――…受験生特有の会話が多く聞こえる。
「そ~いや…福田は都外の大学受けるんだろ?ここから遠いのか?」
「あ~…遠い――――…興味のある事ってなると…そこまで行かないと」
嘘である…
全く興味はない――――…
だが、あの場所で律夏と向かい合っていると…
どんどん…欲が深くなりそうで――――…怖いんだ。
「そうかぁ~…俺も頑張ばらねぇ~と!」
そう言う木戸は授業のチャイムと共に自分の席へと戻っていった。