ひとつ屋根の下の愛情論
第12章 沈殿する記憶と思い
「筆箱――――忘れちゃって…」
彼女は自分の席から筆箱を探し当てると「へへへ」と可愛らしく、その筆箱を俺に見せた。
「この後――――塾?」
「うん…」
その後の会話が続かないのとはお互いに察した。
「暇だし――――途中まで送るよ」
「///えっ、あ――――ありがとう」
あの日以来だろうか…彼女と一緒に歩くのは…
そう言えば…
あの日のパンケーキは…どんな味だったっけ?
思い出せない――――…
しかし、俺は横沢さんを送るといいつつ――――…仕事中の律夏を見たかったのだ…
スーツ姿の律夏はいつもラフな格好で家の中にいるときとは違い…
キリキリとした視線が黒板と生徒たちに向けられている。
あの――――視線が…たまらなく好きなのだ…
しかし、そんなこと言えるわけなく…
夏期講習中は何度――――…沸き上がる情欲に我慢したことか…