ひとつ屋根の下の愛情論
第14章 側にいる理由
進路指導室に入ると、担任は換気のために窓を開けた。
心地いい風が部屋に流れ込み…少し埃っぽさが消えた。
「悪いな~!皆で帰るところだったろ?でも、やっぱり話しておきたくてな――――…あの大学…本当に受けるつもりか?」
そう言うと、鍵のかかっている引き出しを解錠し…ファイルを取り出した。
「うけ狙い――――って、訳でも無いんだろ?」
そこには俺の受験希望している大学がいくつかかかれていた。
「ここは――――福田の手の届く大学だ。しかし、ここは――――特にこっちは…相当頑張らないと…受からない大学だ!俺個人としては!チャレンジするその心構えが誇らしいが…学校側としては無茶はしてほしくない…変更とかはないのか?大丈夫か?」
ファイルから取り出された、俺の進路希望の紙を目の前に担任はため息をつく。
「はい――――…変更はありません。ここを目指して頑張ってはいます……力試し、運試し的な意味合いもありますが」
「ご両親は――――…」
「夫婦で名古屋です。大学の話はしていますし…二人とも俺の進路を応援してくれています」
半分嘘で――――半分本当だ。
夏に帰ってきた時に進路の話はしている。
だが――――とある大学の事は伏せている。
本当に受かるか分からない…無茶な大学を1つ…入れているから。