ひとつ屋根の下の愛情論
第15章 炎の願い
“あきらめろ”
後頭部をハンマーで殴られたような気分だ。
最悪――――…あの日…
ラブホテルの香りを纏った秋音を見下ろした時よりも――――…
最悪な気分だった。
一ミリも…可能性なんかないのは分かってはいたが…
現実をハッキリと見せられ――――…やっと…
理解できた。
――――俺は…何をしているんだ…
二人の唇が離れた時――――…俺は背を向けた。
もう…振り返らない。
もう――――…お前を見ない。
もう――――…あの家には――――帰らない。
俺はそのまま…校門を出た。
と、その時校門の陰に小さな木片が落ちていた。
文化祭で出たゴミだろう…なんか――――…親近感が湧き…拾った。
「お前も――――一緒に来るか?」
片手に収まる小さな木片をポケットに入れて。
俺は一度も振り替えることなどせず……
秋音の高校を後にした。