ひとつ屋根の下の愛情論
第16章 残酷な残り香
「ただいま――――…」
木戸さんと別れて帰ったが…
歩く速度が相当遅かったのか…時間がかかった。
俺は居間にも台所にも行かず…直接――――客間の律夏の布団へと向かった。
「――――律夏…」
倒れこむもうに布団にダイブすると…そのまま目を閉じて――――…布団の奥に微かに残る律夏の香りを探す。
もう、薄くなり始めた残り香は…
俺の精神状態も薄くしていきそうだ。
「――――り…つ――――…」
俺はそのまま…眠りについた。
大学のセンター試験まで……俺は大丈夫だろうか?
――――大丈夫…
大丈夫…
俺は――――…大丈夫…