ひとつ屋根の下の愛情論
第17章 乾きの果て
タバコを吸い浴室の…雅の浴びるシャワーの音を遠くに聞く。
あの日――――…アイツの浴室を想像しながら自慰した事を思い出す。
「――――マジで…遠くなったなぁ…」
呟く言葉はタバコの煙と共に部屋に溶けた。
「どうしたの?黄昏て――――…似合うけど…」
「黄昏てねぇ~よ…」
気がつくと雅が風呂から出ていた。
「ねぇ、律って初詣したの?塾の講師なら生徒の合格祈願は何度してもいいじゃない?」
「――――合格祈願…ねぇ…まだしてなかった」
そういえば…神頼みすらしていなかった――――…
「神様なんて――――いるのかねぇ…」
「さすが、カリスマ塾は違うねぇ…自信があるから神頼みしないんだ」
「逆――――だ…。自信がないから…絶望して…神様すら信じなくなった…」
雅は濡れた髪をバスタオルで拭きながら俺にそっと口づけた…
「案外――――…可愛いこと言うんだね、ダメだよ…弱音吐いたら……惚れちゃうじゃんか」
雅は俺を抱き締めると…首筋に噛みついた。
「やめろ――――…お前の印なんか付けんな」
雅を振り切り――――俺は風呂場へと向かった。
やめてくれ…アイツの印が――――欲しくなる。