ひとつ屋根の下の愛情論
第1章 強制的自立
もちろん…義理母は父の転勤に着いていくことになった。
「独り暮らし――――何かと心配だし、律夏(りつか)に時々、様子を見るように頼んであるから!
律夏も仕事があるけど――――あの子もいい大人だし、何かあったら頼るのよ?」
義理母は俺の目の前に律夏さんの住居と電話番号の書いた紙を置いた。
「律夏君は――――有名な塾の講師なんだよね?忙しいのかい?」
「そうね――――…受験シーズンは忙しいけど…それ以外は比較的自由みたい……」
父さんと義理母さんは見つめあいながらあっという間に二人の世界に入った。
「こんど――――…律夏君も混ぜて四人で食事しようか…君の好きなイタリアンなんか…どうかな?」
「///…ふふふ…素敵」
――――な~にが、“君の好きなイタリアンなんかどうかい”だ!
俺は律夏さんのメモを手に取りそそくさと自分の部屋に戻った。
住み慣れた自分の部屋で、律夏さんの名前を見つめる。