ひとつ屋根の下の愛情論
第3章 弟の悪夢
着替えを済ませ――――あそこの一押しパンの焼ける時間を見計らってアパートを出た。
珍しく午前中の早い時間帯の行動だったが、旨いパンのためなら――――!
そして、タイミングよく焼き上がった一押しの食パンを1斤ゲットし…その足でアイツの家に向かった。
買い物袋から、焼きたての甘い食パンの香りがする!
「トースター…いいの置いてたよなぁ…アイツの家…1枚食っていこうかな――――…ん…?スーツケース?」
外の玄関にポツンと置いてあるシルバーのスーツケースに違和感を感じる。
は?――――アイツまだ行ってないのか?
大分前に“行ってきます”のメールが届いていたことを思いだし更に頭をひねる。
鍵を取り出そうとした手を玄関のドアノブに添える…
――――ガチャ…
と、玄関の扉はすんなり開き――――ゾクッと何故か嫌な予感がした。