ひとつ屋根の下の愛情論
第3章 弟の悪夢
秋音はそれから――――何度も飛び起き…吐く…を繰り返した。
すでに胃の中は空っぽなのに…絞り出すように胃液を吐き出し続けていた。
そして、泣きながら――――助けて…気持ち悪い…
と――――…小さく震えた。
その夜――――母さんと義理の父さんが名古屋から駆けつけた。
あっちでの仕事は順調だっただけに…目の前の息子の状況に戸惑うばかりだった。
「秋音は大丈夫なのか?!」
義理の父さんは絶望したように…自分の息子を見つめる…
「空き巣と鉢合わせて…ボコボコにされたみたいだ――――…」
「律夏が――――…助けてくれたのよね?あと少し遅かったら…秋音君………律夏、ありがとう」
母さんは俺に“ありがとう”と言ったが……
義理の父さんは…押し黙り……「秋音」と呟いた。
俺は両親に…秋音が犯人にイタズラされたこと…言えなかった。
言おうと思ったが――――…
「父さんたちには…言わないで――――…俺は…何もされてないから…言わないで…律夏さん…お願い…」
と、何度も…頭を下げられたからだ…
頭を下げで…泣くからだ…