ひとつ屋根の下の愛情論
第4章 一押しの食パン
「律夏さんが寝る前に――――…俺が寝ちゃったね…ごめんなさい…」
「は?誰が誰ので寝ようが…一緒だ――――布団は布団だ、気にすんな」
そう言うと律夏さんは…座敷から出ていった。
「律夏さんの…布団――――…」
俺は強く握っていた手のひらを開くと…真新しい布団を撫でた。
そして、久しぶりに――――少し寝た気がした。
畳に――――真新しい…布団…
ここは…落ち着く。
しかし、この座敷の隣は…あの――――居間だ…
どんなに模様替えをしようと…
どんなに絨毯を変えようと…
あの――――臭い香りが甦る…
あの…居間なのだ…
「――――うっ…うぇぇ」
考えただけで…吐き気が――――!
俺は急いでトイレに駆け込み、両親と昼に食べた親子丼を全て下水道に流した!
再び――――俺の胃の中は空になったが…
不思議と…お腹は減らなかった。