ひとつ屋根の下の愛情論
第4章 一押しの食パン
「秋音――――…俺の前だけぐらいじゃないか?我慢しなくて…いいの…」
「――――…は?」
一瞬…何を言っているのか分からなかった。
「律夏さんの…前だけ?」
「そう――――…隠さなくていいのは…俺の前だけだって…言ってんだよ」
あ――――…そうか…そう言う事か…
「隠さなくて…いい…」
「俺は――――知っているし…勘のいい方だから…無理してるの分かるし、隠すだけ無駄ってことだ」
――――そうか…罷りなりにも塾の講師だ…先生だしな…
「分かった――――…律夏さんの前では…隠さない…」
「律夏――――…律夏でいい、“さん”付けとか…くすぐったくてしょうがない」
そう言うと…律夏さんは「散歩にでも行くか」と玄関に向かった。