ひとつ屋根の下の愛情論
第4章 一押しの食パン
深夜の散歩なんて――――生まれて初めてだった。
真っ暗な道を新米兄弟が微妙な距離を保ちながら歩く。
「やべぇ…意外に寒いな…」
薄着で出てきた俺たちは意外な寒さに後悔を始めた。
「寒いけど――――あの家にいるより…いいかな?」
ヤバい…変な沈黙が続く…
「やっぱり――――…居間とか台所とか…思い出すか?
今日、台所で体動かなかっただろ?」
やっぱり…気がついていたんだ…この人は。
「あ――――あぁ。動いたら…振り向いたら…あの悪夢が来るかも知れないって…一瞬…頭をよぎった」
あの部屋には律夏さんしかいなかったから…そんなことは無いって頭では分かっているのに…体が言うことを聞いてくれなかった。