ひとつ屋根の下の愛情論
第4章 一押しの食パン
「吐き気は?――――何が原因だ?やっぱり居間か?」
「――――うん…座敷の時は、隣が居間だと思ったら…気持ち悪くて、自分の部屋は…真下が居間だと思ったら…吐いてた」
「はぁ~マジか…」
律夏さんは大きくため息をつくと…少し考え…歩みをゆっくりにした。
「しばらく――――…俺のアパートに来るか?汚い独り暮らしの部屋だけど…吐くよりましだろ?」
俺もつられてゆっくり歩くと、アパートに来ないかと、誘ってくれる律夏さんを見た。
「いや――――…迷惑かけられない。あそこが俺の家だし、帰る場所なんだ。
それに…悔しいしね、あの犯人に…死んだ母さんとの思いでの家をめちゃくちゃにされた上に…トラウマまで植え付けられて――――…絶対、逃げたくない!克服したい!辛くても、何年かかっても…」
俺はあの家から…逃げたくない。
ちゃんと克服して――――…悪夢になんか負けない!
「――――そうか…なら、協力するだけだ…俺は」
そう言うと律夏さんは再び歩き出した。