ひとつ屋根の下の愛情論
第6章 現状維持の押し問答
「それと――――…今さらなんだけど…進学とか…お前考えてんの?」
「あ~…しないつもりでいた…ほら、父子家庭だったから“働いた方がいいのかな?”ってズーッと思ってたんだよ」
病院を出ると、二人で並んで歩きながら進路の話をした。
「まぁ…分からんでもない。
俺の昔は――――母さんに負担かけたくないって進学を諦めたから。でも、母さんと話し合って…奨学金で俺は行くことにしたんだけどな…
お前も義父とちゃんと話し合え……」
進学…かぁ――――…
父さんは、進学してもいいって言ってたけど…
「奨学金かぁ…それなら、父さんに迷惑かけないのかな?」
「でもさ、奨学金――――って結局、何の救済にもなってねぇって…大学入ってから気がつくんだけどな……」
進学も良し悪し…って事を言いたいのか――――…
俺は律夏を見た。
「人気塾講師が――――金の事でチマチマ言うなよ」
「バーカ、金って――――大事なんだよ」
「まぁな…少なくとも…ソレが問題だったりするからな」
俺たちは同時に小さくため息をついた。