ひとつ屋根の下の愛情論
第7章 日常と後回しの三日月
「弟が、まだ調子悪いみたいでな――――悪いが木戸…早めに帰るな」
俺は鞄を手に取ると自分のデスクを離れた。
「あ!福田先生、今日この後予定は~「金江(かなえ)先生、福田先生はご家族の体調不良で先に帰るそうでぇ~す!飲みなら俺が付き合いますよ――――!」
4月から新しく講師として来た金江 静(かなえ しずか)が帰ろうとする俺に声をかけたが、食いぎみで木戸が割って入ってきた。
まだ、数ヶ月の付き合いの金江だが…やたらグイグイ迫ってくる。
腕のいい国語講師だが…“結婚”と言う看板を背負って生活しているように見える。
「え、え――――そ、そうなんですか?お、お大事に」
「はい、先に失礼します」
年上好きの木戸が彼女を狙っているのも…手に取るように分かるのだが、彼女の狙いは俺らしい。