歪ーいびつー
第2章 小5ー夏ー
「……も、森に入るの? ちょっと怖いな……」
目の前に広がるジャングルのように鬱蒼《うっそう》とした森は、まだ陽が沈んでいないというのに怖がるには充分な暗さで……。
今にも消えてなくなりそうな声で訴えてみる。
「大丈夫だよ、夢ちゃん。皆が一緒だから」
「何かあったら俺がついてるから安心して」
「私だっているから。大丈夫だよ、夢」
「夢ってばぁー、まだまだ暗くないから大丈夫だよ!」
「懐中電灯も持って来たし、大丈夫だよ。ね? 夢だって凄い所、見に行きたいでしょ?」
森を見て怯んだ私に、皆が口々に説得を始める。
確かにここまで来て一人でお留守番なんて嫌だ。むしろ、こんな森の入り口で一人待たされる方がよっぽど怖い。
何も考えずに着いて来ただけなので、帰り道なんてわかるはずもなく……。
確か、ここへ着くまでに10分くらいは歩いた。
ということは、まず一人でテントまで帰るのは難しい。
かといって自分一人の為に皆も行かないでとお願いするのも申し訳ない。
チラリと目の前の涼くんを見ると、自信満々に右手に持った懐中電灯を見せてくる。
「一緒に行こう、夢」
ニカッと満面の笑みで笑いながら、空いている左手を私の目の前へ差し出す。
私はコクリと小さく頷くと、差し出された左手に自分の右手をそっと置いた。