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歪ーいびつー

第16章 ー最終章ー




ーー始業式前日、突然朱莉ちゃんが私の家を訪ねて来た。
久しぶりに見るその姿は、酷く疲れて何だか痩せこけて見える。
奏多くんの事が好きだった朱莉ちゃんの気持ちを思うと、私は居た堪れずに思わず視線を逸らした。

「夢……私、明日学校に行くよ」

ーーー!?

朱莉ちゃんの言葉に驚いた私は、逸らしていた視線を朱莉ちゃんへと向ける。
するとそこには、涙を溜めながらも意思の強い瞳で私を見つめる朱莉ちゃんがいた。

「……夢はどうするの? 」
「……っ……」
「また逃げるの? ……涼の時みたいに」
「……っ! 」

朱莉ちゃんの言葉に衝撃を受けた。
私は……また逃げている……。
前を向いて頑張ると約束したのに……また、私は現実から逃げていたんだ。

「お願い、夢ぇ……私を一人にしないでよぉ……っ」

そう言って泣きながら私に抱きつく朱莉ちゃん。

「朱莉ちゃん……ごめんね……っ……ごめんねぇ……っ」

朱莉ちゃんだって凄く辛いはずなのに、朱莉ちゃんには立ち向かってゆく強さがある。私も、朱莉ちゃんの様に強くならなければいけない。
どんなに辛い事があっても、残された私達は今を生きてゆかなければいけないのだからーー。

一人にしないでと泣く朱莉ちゃんをそっと抱きしめ返した私は、「一人になんてさせないから……っ……」と決意を込めた声で答えた。




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