歪ーいびつー
第18章 ー真実ー
「ほら……夢、こっちにおいで。まったく……本当に悪い子だね、夢は。何度言ってもわからない……お前は俺のものなんだよ! 」
不気味に笑う奏多が、狂ったように叫びながら夢ちゃんに近付いて来る。
腕を掴もうとした奏多から夢ちゃんを庇った俺は、わざと机にぶつかり裁断バサミを優雨ちゃんの方へと落とした。
「嫌っ! ……来ないでぇぇぇー! 」
夢ちゃんの泣き叫ぶ声。俺は奏多の腕を押さえると、そのまま夢ちゃんから遠ざけた。
チラリと奏多の背後に視線を移すと、床に落ちた裁断バサミを拾う優雨ちゃんの姿が見える。
俺は奏多の腕を押さえたまま、優雨ちゃんが奏多に突進するのを黙って見届けた。
「……は? 」
ゆっくりと優雨ちゃんの方へ振り返る奏多。
一瞬静まり返った教室は、朱莉ちゃんの悲鳴で再び時間が動き始める。
「あんただけは絶対に許さない!! 」
そう叫んだ優雨ちゃんが、今度は奏多の正面からぶつかった。
「夢には……夢には絶対に近付かせない! 」
そう言って一度奏多から離れた優雨ちゃん。
その手には、血に染まったハサミがしっかりと握られている。
「ぁ……っ……ぁっ……ぁ」
夢ちゃんの小さな声が聞こえて後ろを振り返ると、身体をガタガタと震えさせる夢ちゃんがその光景を見ていた。