歪ーいびつー
第2章 小5ー夏ー
『そろそろ戻らないとね』
そう切り出した涼くんに連れられ、先程までいた皆のいる場所へと戻って行く。
少し前を歩く涼くんの背中を見つめながら、名残惜しさを感じつつも黙ってその背について行く。
目の前にいる涼くんから視線を先へと移してみると、つい先程まで川に入って遊んでいた皆がそれぞれに帰り仕度を始めている姿があった。
「あ、お帰りー! どこ行ってたのー? 」
少しまだ距離のある場所から手を振る朱莉ちゃんの声で、私達に気付いた皆がこちらを見る。
ほんの数秒で皆のいる場所まで着くと、「二人で何してたの? 」と私と涼くんを交互に見ては不思議そうな顔をする朱莉ちゃん。
「ん? ……内緒」
なんて涼くんが返事をするもんだから、「あ~。怪しいぃ~! エッチな事してたんだぁ~!? 」なんて言いだす朱莉ちゃん。
恥ずかしくなった私はその場を少し離れると、川の前に立って握りしめていた掌を広げた。
『俺、夢が好き』
『両思いだね』
涼くんの言ってくれた言葉を思い出しながら、掌に乗ったピンクの貝殻を見つめる。
「ーーそれ、涼に貰ったの? 」
声のした方へと視線を向けると、奏多くんが私の掌を見つめていた。
「……うん」
「そう、良かったね」
そう言って優しく微笑んだ奏多くんは、私の掌から目の前の空へと視線を移す。