歪ーいびつー
第2章 小5ー夏ー
「涼くんがいるよ」
「キャー! 涼くんカッコイイ」
そんな声が聞こえる中、
うん……本当にカッコイイなぁ……。
なんて思いながらポーッと目の前の光景を眺める。
「夢ちゃん、夢ちゃん」
「えっ!? ……な、何? 」
ポーッとしていて少し驚いてしまった私に、楓くんはクスクスと笑いながら、「驚かしてごめんね。……実は家から花火持ってきたんだけどさ、キャンプファイヤーが終わったら皆でやろうよ」と言って小首を傾げて微笑む。
「うんっ! 花火楽しみだね」
「夢ちゃん、シーッだよ。 先生に見つからないようにしなきゃね」
「……うん」
楓くんに人差し指を立てられ、慌てた私は声を潜めた。
先生に見つかったら凄く怒られるんだろうな……。
そんな事を考えながらも、この後やる花火が楽しみで仕方がなかった私は……こっそりと小さく笑みを漏らした。
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その後も滞りなく進んだキャンプファイヤーは、そろそろ終わりへと近づいてゆく。
「あ、あのね、これ……」
涼くんとやっと二人きりになれた私は、ポケットに入っていたブレスレットを取り出すと涼くんの目の前へと差し出した。
「これ、夢が作ったの? 」
「……うん。先生に穴を開けて貰って紐を通しただけなんだけど……」
「夢とお揃いなんだね」
既にブレスレットを付けていた私の手首に気が付くと、涼くんは私の掌からブレスレットを受け取ってすぐに自分の手首へと付けた。
「ありがとう。大切にするよ」
ニカッと笑った涼くんは、ブレスレットの付いた手で私の頭を優しく撫でる。
ちょうどその頃キャンプファイヤーも終了し、ゴミの片付けやテントに帰って行く生徒達やらで、一気に周りが騒がしくなってくる。
突然ギャラリーが多くなった事で、何だか気恥ずかしくなった私は少しだけ顔を俯かせた。
すると、目の前の涼くんが口を開いた。
「夢、俺ちょっと用があるから。また後で、花火の時に会おう」
「……うん、わかった」
顔を上げて返事をすると、笑顔を残して立ち去って行った涼くんの背中に小さく手を振る。
涼くんの姿が見えなくなるまでその場で見送ると、私は優雨ちゃん達を探した。
けれど優雨ちゃんどころか誰一人として見つける事ができず、もうテントに帰ったのかな? と思ってテントへ戻ってみる事にした。