歪ーいびつー
第4章 高1ー春ー
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「はい、どうぞ」
和室へと通された私達の目の前に、ジュースとお菓子の入ったお皿が出された。
「ありがとうございます」と口々にお礼を告げると、グラスに注がれたジュースを飲み出す。
私は手元にあるグラスから視線を上げると、目の前に座った女性に向かって口を開いた。
「あの……御線香をあげてもいいですか? 」
「……ええ、もちろん」
そう言って優しく微笑むと、私を連れて仏壇前まで移動する。
「今日も夢ちゃんが来てくれたよ」
仏壇に向かって一言話しかけると「どうぞ」と言ってその場を離れてゆく。
あの日から頻繁にここへ訪れている私は、何度となくこの一連の光景を目にしている。
仏壇前の座布団に正座をすると、私は御線香を立てリンを鳴らして手を合わせた。
ーー涼くん、私高校生になったよ。
制服、似合うかな?
心の中でそう涼くんに話しかけると、閉じていた目を開き仏壇に飾られた写真を見つめる。
そこには、あの日と変わらない小学五年生のままの涼くんがいた。
ニカッと笑ったその写真は、私の大好きなあの笑顔の涼くん。
本当に大好きなーー私の初恋の人。
目尻に溜まった涙を拭うと、次の人と交代をする為に元の席へと戻った私は、ジュースの注がれたグラスを手に取り、今にも溢れ出てしまいそうな悲しみを押し込める様にしてコクリと一口飲み込んだ。
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