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歪ーいびつー

第4章 高1ー春ー



「夢ちゃん。ほら、おいで」
「あっ……ありがとう」

楓くんに抱き上げられて降り立った私は、楓くんの腕を掴んだまま顔を見上げてお礼を伝えた。
オリエンテーション合宿に来ている私達は今、樹海にある溶岩洞窟へと来ている。
その入り口で、怖がって中々下へ降りられないでいた私を楓くんが下から抱き上げて下ろしてくれたのだ。

「中は暗いから気を付けてね」
「うん」
「また夢ちゃん泣いちゃうかな~」
「……泣かないよ」
「でも暗いとこ怖いでしょ? 」
「……もう高校生だから泣かないよ」
「そうなの? 」

楓くんはそんな事を言って私をからかいながらも、「そこ気を付けてね」と時折気に掛けては手を差し出してくれる。

暗くて不気味な洞窟はやっぱりとても怖くて……内心もう帰りたいと思っていた私だけど、綺麗な氷柱を見た時には感動して来て良かったと思えた。


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樹海やら洞窟やらで、やっぱり凄く怖かった私は宿泊先へ着くとドッと疲れが出た。

飲み物買いに行こう……。
一人、宿泊部屋を出た私は、カラカラになった喉を潤そうと一階にある自動販売機へと向かった。
お茶の入ったペットボトルを買うと、その場でコクコクと少し飲む。
喉が潤ったところで、部屋へ戻ろうと後ろを振り返ると、ちょうど階段を降りてくる奏多くんが視界に入った。

ここ三日ほど奏多くんを避けていた私は、奏多くんの姿を見て思わず逃げ出した。
ーーはずだった。
あっさりと奏多くんに捕まった私は、手首を掴まれて壁に押し付けられる。
その衝撃で、持っていたペットボトルは私の手元から滑り落ちて床を転がった。

「やっと捕まえた」

笑顔で見下ろす奏多くんが恐ろしくて、カタカタと震え始めた身体。
思わずギュッと固く目を閉じて身体を縮こませる。

「ーー何やってんの? 」

突然聞こえた隼人くんの声に、私は閉じていた目をゆっくりと開いた。
床に転がったペットボトルを拾い上げた隼人くんは、そのままこちらへ近付くと奏多くんの腕を掴んだ。

「夢ちゃん怖がってるじゃん」

そう言って私から奏多くんを引き剥がすと、「夢ちゃん行こっ」と言ってニッコリ笑って左手を差し出す。
チラリと奏多くんの方を見てみると、その顔は怒りで溢れていて……この場にいたくないと思った私は、差し出された手を取ると隼人くんと並んで歩き出したーー。

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