歪ーいびつー
第2章 小5ー夏ー
大人っぽい顔立ちの優雨ちゃんの、その整った顔から作り出される笑顔はとても優しい表情をしている。
肩まである髪の毛を耳にかける仕草が、妙に大人っぽく感じてドキリとする。
「えっ。でも……」
「大丈夫だよ」
自分の担当くらいやらなくちゃと申し訳なく思っていると、優雨ちゃんは優しく微笑み大丈夫だと言ってくれる。
本当に頼んじゃってもいいのかな……?
そんな事を考えていると、優雨ちゃんの視線が私からその背後へと移動した。
どうしたのかとその視線を辿って振り返ってみると、そこには私を見下ろす涼くんが立っていた。
「俺がやるよ」
ニカッと笑った涼くんは、私の手に握られたペグハンマーを取ると一気にペグを打ち込んでいく。
あっという間にペグを打ち込み終わった涼くんは、「はい、これで終わり」とペグハンマーを私の手に戻すとその場を立ち去って行く。
「あっ。……ありがとう!」
少し離れたところにいる涼くんの背に向けてお礼を告げると、振り返った涼くんが笑顔で手を振る。
私が小さく手を振って応えると、それを確認した涼くんは自分のテントへと帰っていった。
「ね? 言ったでしょ?涼は夢が好きなんだよー」
小首を傾げながら私の顔を覗き込む朱莉ちゃん。
その大きな目を上目遣いにしてクスクスと笑う姿はとても可愛らしい。
私は恥ずかしさで顔が赤くなるのを感じて俯いた。
「もう、朱莉。いい加減に夢をからかうのはよしなさいよ」
「はーい」
未だに朱莉ちゃんはクスクスと笑ってはいるものの、優雨ちゃんのお陰でやっとこの会話が終わる。
そう思うと、熱かった顔から徐々に熱がひいてくる気がした。
そっと自分の頬に両手で触れてみればそれはいつもと同じ体温で……。
良かった、と一人胸をなでおろした。