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歪ーいびつー

第2章 小5ー夏ー



「テントが出来た班は夕食の準備を始めなさーい」

頬に触れていた両手を下へおろすと、声のした方へと目を向けてみる。すると、何やら遠くの方で先生が次の指示を出している姿が見える。
周りを見渡してみると、もう夕食作りに取り掛かっている子達がチラホラと目に入ってくる。

「私達も行こうか」
「「うん」」

優雨ちゃんに促され、自分達の班に割り当てられた屋外キッチンへ行くと、そこには既に人数分の食器が揃っていた。
きっと私達より先に来た誰かが用意してくれたのだ。
そう思って見渡してみれば、そこには見覚えある後ろ姿が……。

「……あっ!やっと来たんだねっ」

私達の気配に振り返った楓くんが、笑顔で出迎えて近づいてくる。

「涼達は炭と食材取りに行ってるよ」

目の前でピタリと立ち止まった楓くんは、可愛らしい笑顔でそう告げた。
女の私よりも可愛らしい顔立ちをした楓くん。
楓くんを初めて見る人は、女の子だと勘違いするかもしれない。左目の泣きぼくろが、その顔立ちによく似合っている。

「食器は楓が持ってきてくれたの?ありがとう」
「さすが、うちの班の男子達は頼りになるねー。楓、ありがとう」
「どういたしまして」

優雨ちゃんと朱莉ちゃんがお礼を言うと、楓くんはにこりと微笑んだ。

「楓くん、ありがとう。遅くなっちゃってごめんね」
「大丈夫だよ、夢ちゃん」

来るのが遅くなってしまった事を申し訳なく思い謝ると、楓くんは優しく微笑んでくれる。

「じゃあ、涼達が帰ってくる前に食器洗ってようか」

そんな朱莉ちゃんの言葉を合図に、それぞれが食器を持って流しへと移動を始める。

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