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歪ーいびつー

第6章 優雨

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「涼、どこ行くのー? 」

少し先から聞こえた楓の声に、私は足元にあった視線を前へ向けた。

「夢のとこ! 」

笑顔で楓に返事をする涼は、そのまま私の横を走り去って行く。
……あれ?
不思議に思った私は後ろを振り返ってみた。すると、さっきまですぐ後ろにいたはずの夢の姿がない。
どこへ消えたのかとさらに後ろへと目を向けてみると、夢は川辺へと続く道にまだ一人でいた。

麦わら帽子を被って川の方へ向いた夢は、そのまま空へ向けて両手を広げる。
風に吹かれてユラユラと靡《なび》く髪。
太陽に照らされた肌は真っ白で、今にも消えてしまいそうな程に儚く見える。

気持ち良さそうに風を受ける夢の姿は、まるで空を飛ぶ天使のようで……私は思わず、その光景に目を奪われてしまったーー。



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「夢って涼の事好きなの? 」
「……えっ?! 」

私達が今夜寝泊まりするテントを作っていると、突然朱莉が涼と夢の話をし始めた。
聞いていたくなかった私は、ただ黙々とペグを打ち込んでゆく。
すると突然、少し強めの風が吹いてテントがぐらついた。


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