歪ーいびつー
第6章 優雨
「わぁー! ちょっ……夢。何やってるの! 」
「……あっ。ご、ごめんね」
朱莉に注意された夢は、慌てて布端を掴むとまた作業へと戻る。
「けどさ、涼は絶対に夢の事好きだよねー」
ーーーカンカンカンカン
また涼の話を始めた朱莉に、私はただ黙って作業を続ける。
「優雨もそう思うでしょ? 」
突然話を振ってきた朱莉に、「……そうだね」と私は素っ気なく答えた。
私が答えるまでもなく、どう見ても涼は夢の事が好きだ。
そして夢も……。
私はペグを刺し終えるとチラリと夢の方を見た。
中々刺さらないペグを覗き見ては、首を傾げている夢。
その姿が可愛くて、私はクスリと笑うと夢の元へと近付いた。
「私がやるよ」
そう言って右手を差し出すと、少し驚いた顔をする夢。
「えっ。でも……」
申し訳なさそうに上目遣いで私を見る夢。
その姿は本当に愛らしい。
「大丈夫だよ」
そう言って優しく微笑みかけた時、涼が夢の側へとやってきた。
「俺がやるよ」
ニカッと笑った涼は、夢からペグハンマーを取るとそのままあっという間にペグを打ち込んでゆく。
「はい、これで終わり」とペグハンマーを夢の手に戻すと、その場を立ち去って行った涼。
「あっ。……ありがとう! 」
そう言って小さく手を振る夢は、涼を見つめて可愛らしく微笑む。
私は幸せそうに微笑む夢の横顔を見つめながら……チクリと痛む胸をそっと抑えた。
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