テキストサイズ

歪ーいびつー

第7章 ー5月ー



「夢ちゃん。どうして俺の事避けるの? 俺……何かしたかな? 」

私の机の前で屈んでこちらを覗き込む楓くんは、そう言って悲しそうな顔をする。
あれから私は、奏多くんとの約束通りに楓くんとの接触を避けていた。
と言っても同じクラスの私達。避け続けるのは簡単ではない。現に今こうして捕まってしまったのだから。

目の前で楓くんが話し掛けてくれてるというのに、無視してこの場を立ち去るなんて凄く酷いと思う。私だってされたくない。
だけど、私は奏多くんが怖くて堪らなかった。
こんな現場を目撃されたら……また怒るかもしれないーー。

「……っ」

ごめんね、楓くん。そう心の中で呟くと、私は席を立って急いで教室を出た。

ーーードンッ

教室の扉を出た瞬間に誰かとぶつかってしまった私。
下を向いていたせいで、目の前に人がいる事に気付いていなかったのだ。

「あっ……ごめんなさい」

そう言って顔を上げると、冷たい表情で私を見下ろす奏多くんと瞳がぶつかる。

「……っ」

あまりに冷たい瞳をした奏多くんに、私の身体は恐怖でガタガタと震え出した。
奏多くんは無言で私の腕を掴むと、そのまま私をズルズルと引きずるようにして廊下を歩き出す。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ