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歪ーいびつー

第11章 高1ー夏ー



「夢……ほら、いつもみたく口開けて」

私の顎を掴んでいる奏多くんは、そう言って優しく微笑んだ。
私が躊躇《ためら》いながらも小さく口を開くと、奏多くんはそこへ舌をねじ込ませて私の口内を好き勝手に侵してゆく。

楓くん達と揉めた日以来、奏多くんは毎日私にキスを求めるようになった。
当初、私は嫌だと拒んだ。この行為は罰でしか与えられないものだと思っていたから。
拒む私に怒り出した奏多くんを見て、黙ってこの行為を受け入れる事しか私に選択肢はないのだと知った。

何度も私の口内を堪能した奏多くんは、その行為に満足すると私を解放する。
私の頬に流れる涙を拭った奏多くんは、「いつまで経っても慣れないね、夢は。……可愛いよ」と言って恍惚《こうこつ》とした表情をさせた。

奏多くんが私に求めたのはキスだけではなかった。
更に交友関係に煩《うるさ》くなっていった奏多くんに、優雨ちゃん楓くんは勿論の事、その他一切の男の子と話す事を禁止された。
朱莉ちゃんとも何故か疎遠になり、私の学園生活はほぼ奏多くんと二人だけの世界になってしまった。
奏多くんに従い、奏多くんが怒れば謝る。私は一人、泣きながらそんな日々を過ごしている。

「それじゃあ夢、また後でね」

私の目の前で優しく微笑む奏多くんは、「今日も良い子でいるんだよ」と私の耳元で告げると去って行った。

私はそんな奏多くんの後ろ姿を見つめながら、大好きな涼くんを思い浮かべる。
いつも私の側にいてくれた涼くん。
私が困っている時には必ず手を差し伸べて助けてくれた。

ーー涼くん、助けて……。
薄れる意識の中、私は居るはずのない人へ向けて助けを求めると、静かに涙を流して目を瞑った。



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