歪ーいびつー
第12章 優雨 3
暫くして夢が泣き止むと、私は抱きしめていた身体を離して夢の顔を見つめた。
「……夢、もう奏多の言う事なんて聞かなくていいよ。私は絶対に夢から離れないから。ね? 」
私が微笑むと、夢は安心したかの様に小さく微笑んで頷く。
するとちょうど、終業を知らせるチャイムが鳴った。
「夢、今日からは私と一緒に帰ろうね。……実はね、もう夢の鞄も持って来てあるんだ。だから奏多が来る前に帰ろう? 」
「……うん。優雨ちゃん、ありがとう」
笑顔で頷いた夢は、ベットから出ると上履きを履き始める。
私は、五時間目の授業をサボってここへ来ていた。
そうでもしないと奏多に邪魔されて会えないと思ったから。
終業のチャイムが鳴ったということは、そろそろ奏多がここへ迎えに来てしまう。
その前に早く帰らないと……。
夢が鞄を持ったのを確認すると、私は夢の手を取って扉へと向かった。
ーーーガラッ
ーーー!?
まさに扉に手を掛けて開けようとしたその瞬間、目の前の扉は自動で開くとそこには奏多が立っていた。
「何してるの? 」
私達を視界に捉えた奏多は、怒りを含んだ瞳で鋭く睨みつける。
「優雨とは関わるなと言ったはずだよ」
私達を睨みつけながらそう言った奏多に、私は思わず後ずさった。
奏多は夢の腕を掴むと私から引き離し、そのまま保健室を出て行こうとする。
「嫌! 私……私優雨ちゃんと一緒にいたい! もう奏多くんとは一緒にいれない! 」
夢の言葉にゆっくりと振り向いた奏多は、冷めた目をして夢を見ながら口を開いた。
「……は? 何言ってるの、夢」
「優雨ちゃんと一緒にいたい……」
奏多の表情に怯んだ夢は、それでも小さな声で言葉を紡いだ。
「夢は優雨の正体を知らないからそんな事が言えるんだよ」
チラリと私を見た奏多は、フッと鼻で笑うとその視線を夢へと戻した。
「……っ! 奏多やめて! 」
「優雨はレズビアンだよ。ーー夢の事を女として好きなんだよ」
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