歪ーいびつー
第13章 ー6月ー
「……うん。私も……朱莉ちゃんの気持ちに気付いてあげられなくてごめんね」
そう言って朱莉ちゃんを抱きしめると、朱莉ちゃんは泣きながら私を抱きしめ返してくれる。
「ごめんっ……ごめんねぇ……夢ぇぇ……っ」
「うん……うん。もういいよ、大丈夫だから」
泣いて謝る朱莉ちゃんを抱きしめたまま、私達は暫くそのままでいた。
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朱莉ちゃんと無事に仲直りのできた私は、優雨ちゃんの待つ美術室へと戻って行く。
優雨ちゃんもう戻ってきてるよね。そう思いながら扉を開けてみるも、そこには優雨ちゃんの姿はなかった。
……あれ? 先生との話しが長引いてるのかな?
そう思った私は、机に置かれたままだった携帯を手に取った。するとそこには、優雨ちゃんからのメッセージが表示されていた。
【ごめんね、夢! もう少し長引きそう。本当にごめんね! 】
時刻を見ると、五分前に送信されたものだった。それを確認した私は、もう少しかかりそうだなと思いながら飲みかけだった缶を口にする。
それにしても、さっきは朱莉ちゃんと仲直りができて本当に嬉しかった。
訳もわからず避けられていた私はずっとモヤモヤしていたから……。
明日は楓くんとも話せるといいな。
手に持っている缶ジュースをコクコクと飲み干しながら、そんな事を思う。
私は開いたままの携帯をスライドさせると、奏多くんから来たメッセージを見た。
それは今日だけで何十件もきていて、その内容はどれも私の居場所を尋ねるものや、奏多くんを避けている私に怒っているものだった。
奏多くんのメッセージを見て急に心細くなった私は、携帯を閉じると小さく呟いた。
「……優雨ちゃんまだかなぁ」
あれから十分近くは経ったので、きっともうすぐ帰ってくるかも。そう思いながら、眠たくなってきた瞼を擦る。
あ……私……鍵、閉めたっけ……?
薄れる意識の中、私はそんな事を考えながら瞼を閉じたーー。
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