歪ーいびつー
第13章 ー6月ー
暫くすると、私の口を解放した誰かは私の首を舐め始めた。
私はやっと解放された口で、勢いよく空気を吸い込むと大声で叫んだ。
「いやぁぁぁーー! っグ……ぅ……っ涼く……っ涼くん! ……ぅぅ……涼くん! ……っ」
気付いたら……私は涼くんの名前を口にしていた。
私は涼くんに助けを求めていた。
もういないはずの涼くんにーー。
叫び出した私に驚いたのか、覆い被さる誰かの動きはピタリと止まり、暫くすると私の上からその重みが消えた。
私が泣きながらずっと涼くんを呼び続けていると、扉が開閉する音が聞こえ、その誰かが立ち去って行く気配がする。
一人どこかにとり残されたままの私は、ただひたすら助けてと叫び続けたーー。
暫くすると、私の声を聞きつけた優雨ちゃんと先生が駆けつけて来て、私は無事に保護されるとそのまま先生に車で送ってもらって帰宅する事になった。
その車中、優雨ちゃんから聞いた話しでは……優雨ちゃんが美術室に戻ると荷物だけ置かれたまま私の姿はなかったらしい。そして、行方不明になった私を一時間も先生と探してくれていたのだと。
その後私は書道室で発見され、無事にこうして保護された。
先生には誰がこんな事をしたのかと聞かれたけど、私には直前の記憶がなくて答える事ができなくて……ただ、直前に見た奏多くんのメッセージを一人思い出していた。
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