歪ーいびつー
第13章 ー6月ー
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「……夢ちゃん。前に一緒に頑張ろうって言った事、覚えてる? 」
「……はい」
泣き止んだ私をテーブル前に座らせた涼くんのお母さんは、デジカメを持ってきてそう口を開いた。
「私ね、涼が亡くなってから今まで一生懸命頑張ってきたけど……本当の意味では頑張れていなかったの。……現実を受け入れて前を向いて頑張れていなかった」
「……」
「このデジカメね、涼があの日に使っていた物なんだけど……今まで怖くて見れないでいたの。見なければ、あの子はまだキャンプに行ったまま帰っていないだけなんだって思える」
「……」
「だって見たらどうしても辛いでしょ? あの子の死を受け入れなくちゃいけないんだもの」
「……っ……」
「夢ちゃんには本当に申し訳ないと思っているの。子供時代にあんな経験させてしまって。夢ちゃん……涼の事が好きだったわよね? 」
その言葉に、私は涙を流しながら小さく頷いた。
「ありがとう、涼を好きになってくれて」
次から次へと流れてくる涙を拭いながら、涼くんのお母さんが優しく微笑む姿を見つめる。
涼くんのお母さんは手元のデジカメに一度視線を落とすと、何かを決意したような瞳で私を見た。
「夢ちゃん……夢ちゃんには涼が死んでしまった事を受け入れて、前を向いて生きていって欲しいの」
「……」
「……私も受け入れて前を向くから。もう一度、少しずつ……少しずつでいいから……一緒に頑張っていきましょう」
そう言った涼くんのお母さんは、一筋の涙を流すと私の手をキュッと握りしめた。
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