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歪ーいびつー

第13章 ー6月ー



「涼くん……」

掌の上にある小さなピンクの箱を見つめ、ポツリと小さく呟く。

私が学校を休むようになって、土日を挟んで今日でちょうど五日経った。

『夢ちゃんには涼が死んでしまった事を受け入れて、前を向いて生きていって欲しいの』

四日前、涼くんのお母さんに言われた言葉を思い出す。
そんな事、私にできるのだろうか。
頭ではわかっていても、私は毎日涼くんの姿を求めて思い描いていた。
受け入れて前に進むとは、一体どうすればいいのか……正直私にはわからない。
わからないけど、涼くんのお母さんが言っている意味は理解できた。
前を向いて生きていって欲しいと言った涼くんのお母さんの言葉は、私を思っての事だというのは凄くわかる。

受け入れて前を向いて生きる……。
私は手の中にある箱の蓋に触れてみると、その蓋を開けようとする。ーーが、蓋から手を離すと机の上にそっと箱を置いた。

ーーーコンコン

「夢ちゃん、今日も楓くんが来てくれたわよ」

私の部屋の扉が軽くノックされると、続けてママの声が聞こえてくる。
一言二言、ママと楓くんが扉の外で会話を交わした後、パタパタと去って行くママの足音が聞こえた。


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