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歪ーいびつー

第13章 ー6月ー



「……夢ちゃん、具合どう? 」

扉の外から聞こえる楓くんの声。
私が学校を休むようになった日から、楓くんは毎日こうして来てくれている。
優雨ちゃんや朱莉ちゃんも、もちろん何度も来てくれている。
唯一事情を知っている優雨ちゃんは、一人にしてごめんねと何度も泣きながら謝っていた。
優雨ちゃんのせいじゃないのに……。

「今日ね、再来週やる体育祭のハチマキカラー発表されたんだ」

扉の外で話し続ける楓くん。
毎日家まで来てくれる楓くんを、私は一度も部屋へ招き入れる事はなかった。
本当は仲直りがしたいのに……。こうして楓くんは毎日来てくれているというのに……。

扉の外で話す楓くんにいつも私は無言のままで、そのまま話しを続ける楓くんは暫くすると、『夢ちゃん、また明日来るね』と言って帰って行く。そんな事を繰り返していた。
あんな事があった私は、男性が怖くて堪らなかったから。
どうしても楓くんと会う気になれなかったのだ。
それでも何も聞かず、こうして毎日やって来ては今日あった事を話してゆく楓くん。

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