歪ーいびつー
第13章 ー6月ー
奏多くんの姿を捉えた優雨ちゃんは一瞬驚いた顔を見せると、すぐに奏多くんに駆け寄ってその腕にしがみついた。
「やめて! 夢に近付かないで! あんたでしょ!? ……あんたが夢にあんな酷い事したんでしょ!? 」
奏多くんの腕を引っ張る優雨ちゃんは、そう言いながら大声を上げた。ーー次の瞬間、奏多くんに突き飛ばされて床に倒れ込んだ優雨ちゃん。
ーーー!!
思わず飛び出して行こうとした私を後ろ手に抑える楓くん。
その腕にしがみつきながら、私は奏多くんに向かって声を上げた。
「やめて奏多くん! 優雨ちゃんに酷い事しないで! 」
「奏多、女の子に暴力振るうなんて最低だよ……優雨ちゃん、大丈夫? 」
私を庇いながらも、楓くんは床に倒れている優雨ちゃんを気遣う。
「……夢、こっちにおいで」
楓くんの言葉がまるで聞こえていないかのように無視をした奏多くんは、そう言って私に向けて手を差し出した。
その背後で、ムクリと立ち上がった優雨ちゃんが奏多くんを鋭く睨みつけながら口を開いた。
「あんたなんかに夢は渡さない! 」
そう言って再び奏多くんの腕にしがみついた優雨ちゃん。
その優雨ちゃんを引きずる様にして、ゆっくりとこちらへ近付いてくる奏多くん。
「……っ嫌! 私っ……皆と一緒にいる! 」
「夢はこんなやつらと一緒にいるべきじゃないよ」
「……っ皆の事を悪く言わないで! 」
「いい加減にしろっ! 」
楓くんの後ろに隠れていた私は、突然荒げたその声に驚いてビクリと肩を揺らした。
そしてそれは徐々に全体へと広がり、ついには身体全体がカタカタと震え始めた。