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雪野かなえに想いを込めて

第3章 孤独な少女とおせっかいRocker

「っ……」

飛べる。そう思ったのに、私は何か温かいものに抱かれ、拍子に尻餅をついた。

「ごめん、痛かったな……。あたし、気遣いとかそういうの下手くそで。ごめん、体が勝手に動いた。でも、ごめん、今は離せない」

顔の横にかかる長い髪は、さらさらで綺麗な金髪。細さと柔らかさ。耳に心地よい低温ボイス。私、この人、知ってるような……そんな気がする。

「だれ……?」

「あたしは、雪野かなえ。たまたま通りかかっただけのおせっかい。だめだな、いろはとかのおせっかいがうつっちゃったのかも」

雪野かなえ。私、この人、知ってる。ライブハウスでこの人が奏でる音楽を聴いて、楽器をやりたいって思ったんだ。だけど、高いのに親に買ってもらったベースを中々、人前で弾けなくて、苛立って。やってけない。そう……一緒にやりたかった子に言われたんだっけ?

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