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はるのかぜ

第57章 教えることの嬉しさ

「21よ。ところで君は今、何してるの?」

「いやー、俺、数学苦手で、あんな問題出されてもわからなくて。」

「大丈夫よ。私が教えてあげるから、一緒にやろう。じゃあ、まずは1番の問題から。大中小3個のさいころを投げるとき、出た目でできる3桁の数字は何通りあるかだけども、とりあえず、3桁の数字って言うのは百の位と十の位と一の位でできてるわね。じゃあ、まず百の位に当てはまる可能性のある数字だけど、サイコロの目っていつくある?」

「それぐらいはわかるよ。6つでしょ。」

「そうね。ということは百の位になる数字は1~6の6通りあることになるでしょ。」

「うん。」

「じゃあ、同じ要領で十の位になる数字は何通りある?」

「同じように6通り!」

「じゃあ、一の位は?」

「これも6通り!」

「その通り、今回の問題では百の位も十の位も一の位もそれぞれ6通りずつあることがわかったわね。じゃあ、ちょっと教科書戻るね。こういう風にそれぞれの位に何通りの数字が当てはまるかがわかれば、ここに書いてる「積の法則」が使えるの。じゃあ、今、それぞれの位が全部6通りだったでしょ。この法則に当てはめると?」

「6×6×6で216通り?」

「正解!」

「すげぇ、俺解けたよ!」

「じゃあ、もうひとつの問題。6個の数字1、2、3、4、5、6のうちの異なる3個を並べてできる3桁の数字は何通りあるかって問題。解く要領はさっきの積の法則を使えるけど、今回は異なる3個ってところが違うわね。じゃあ、百の位に使える数字は何通り?」

「全部使えるから6通り!」

「そうそう。じゃあ、次の十の位だけど、今回の場合は百の位で1個使ったから、1個数字が減るわね。じゃあ何通り?」

「5通り!」

「そう。じゃあ一の位は?」

「4通り!」

「よし、じゃあ積の法則に当てはめて。」

「6×5×4で120通り!」

「正解!」

「やった!先生のお陰で俺、できた!」

「お前は本当に女子に弱いな!」

ハルと男子生徒のやり取りを見ていた国分先生が言いました。

「へへへ。でも、俺、この先生のお陰で問題解けたんだよ。先生、ありがとう。」

ハルはこの生徒からのお礼の一言を聞いた瞬間、今までに感じたことのない嬉しさに包まれました。そして、ハルの教育実習はまだまだ続くのでした。

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