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はるのかぜ

第68章 心も折れる、チョークも折れる

いよいよハルにとって、人生初の授業の日がやってきました。ハルは国分先生と一緒に教室に向かいます。

「とりあえず、初めての授業だ。あんまり考えすぎず、まずはやってみろ!」

「はい。」

やがて、2人は教室にたどり着き、国分先生は教室の後方に、ハルは教壇へと向かいます。チャイムが鳴ると共に学級委員の生徒が号令をかけます。

「起立!気をつけ!礼!」

「お願いします。」

生徒全員が着席したのを見計らって、ハルが話し始めます。

「じゃあ、今日は、先週国分先生からお話があったように、私が皆さんの授業をします。どうぞよろしくお願いします。」

ハルの一声に生徒たちから自然と拍手が沸き起こりました。

「ありがとうございます。じゃあ、今日は教科書の26ページを開いてください。」

ハルの一声で生徒たちは教科書を開きます。

「今日から「組合せ」という章に入ります。じゃあ、まずは本題に入る前に今までの復習をしたいと思います。」

そう言うとハルは黒板に問題文を書きます。

「じゃあ、少し時間を取りたいと思うので、この問題を解いてみてください。」

生徒たちはハルが黒板に書いた問題を解き始めます。

 しばらくすると、生徒たちの手の動きが止まり始めました。ハルは再び口を開きます。

「そろそろ解けましたかね。」

ハルの問いかけに数名の生徒が頷きます。

「じゃあ、答え合わせしましょう。答え書いてくれる人?」

その問いかけにも数名の生徒が手を挙げます。

「じゃあ、村上君、お願いします。」

ハルは1人の男子生徒を指名しました。男子生徒が黒板に答えを書き始めます。答えを書き終え、席に戻るのを確認してハルが続けます。

「はい、村上君ありがとうございました。ばっちりですね。今回の問題は4個の数字の中から3個を選ぶので、4P3と表せます。4P3は4から順番に3つの数字をかければいいので、4×3×2で答えは24個が正解です。」

そう言うとハルは男子生徒の書いた解答に赤いチョークで丸を書こうとしたのですが、書きかけた時にチョークがボキッと音を立てて折れてしまいました。ハルは一瞬動揺しましたが、気持ちを落ち着け続けました。

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