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はるのかぜ

第6章 友は待っていた

ハルにとって、中学生活最後の春休みがやって来ました。ハルは久々に塾の教室に居ました。春期講習初日、ハルは少し早めに塾へ向かい、机に座って授業の開始を待っていました。中3の春期講習とあって、見慣れない顔もたくさん見られました。授業開始まで10分を切った頃のことでした。聞き慣れた声がハルを呼びました。

「内海さん?内海さんだよね。」

ハルは振り向きました。

「高橋さん!」

その声の主は有紀でした。

「お帰り、戻ってきたんだね。」

「うん、高橋さんも残っててくれて嬉しい。またよろしくね。」

「うん。」

「そう言えば、岡本さんもまだ居るの。」

「もちろん。」

有紀の言葉にハルの笑顔はさらに増しました。
まもなくして、授業の開始時間ギリギリになった頃、愛も姿を現しました。いつチャイムが鳴ってもおかしくない時間だったので、ハルは愛に手で合図を送りました。愛も久々に見るその顔に少し驚きましたが、すぐに合図を返しました。

休み時間、久々に3人の顔が揃いました。授業開始前に会話ができなかった愛が言いました。

「内海さん、お帰り!」

「ただいま。」

「突然居なくなった時はびっくりしたよ。」

有紀が言いました。

「心配かけてごめんね。ちょっと家でいろいろあって何も言えずに辞めることになって。でも、戻って来れてよかった。2人とも元気そうで安心した。」

有紀も愛も頷きます。久々に3人の顔に笑顔が戻った瞬間でした。

春期講習も終わりに近づいた頃、塾で三者面談が行われました。

「内海さん、春期講習はどうだった?」

そう尋ねたのは教室長の木野寛之先生です。

「楽しかったです。」

ハルは笑顔で頷きました。

「こちらにいらっしゃる高橋さんや岡本さんとも仲良くなったみたいです。」

弥生が続けて言います。

「それはいいことだね。どうだい、4月からも来ないかい?」

「はい、よろしくお願いします。」

木野先生のその問いかけにハルは頷きました。それと同時にハルは弥生に視線を送りました。弥生も頷いているのをハルは感じました。ハルは再び有紀や愛との塾生活を送ることとなりました。そして今度は、絶対に有紀や愛とは離れないと心に誓ったハルでした。

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