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ハルはそのまま、すぐ近くにいた手越教頭に声をかけます。

「教頭先生、3週間お世話になりました。」

「3週間、お疲れ様でした。いろいろ大変だったと思いますが、実習生であれだけ堂々と授業をされた方は初めて見ました。あなたは教えるという才能があると思います。将来、教師をはじめとする教える仕事に就けるといいですね。」

「はい、頑張ります。本当にありがとうございました。では、失礼します。」

そう言うと、ハルは職員室を後にしました。手越教頭の一言を聞いたハルはFM制作部の先輩、延秀から言われた言葉を思い出していました。

「FMの活動は意外なとこで役に立つから。」

ハルは今がまさにFMの活動が役に立った瞬間だと感じていました。

　ハルが昇降口にたどり着いたときのことでした。

「あっ！ハル先生だ！」

背後から声をかけてきたのは4年2組の女子生徒でした。

「今日でお別れだね。」

「本当に淋しいです。私、先生のホームルーム好きでした。しゃべりうまいし。」

「そっか、ありがとう。」

「ハル先生、この学校の先生になってください。」

その言葉を聞いた瞬間、ハルはゆっくりと女子生徒を抱きしめました。

「嬉しいこと言ってくれるね。この学校の先生になれるかはわからないけど、私、本当の先生目指してがんばる。」

ハルは、今までの人生でこんなに人を愛おしいと思ったのは初めてでした。この3週間、時には失敗もあったり、大変なこともあったりしましたが、ハルにとっては充実した3週間であったことは間違いないでしょう。貴重な3週間を過ごしたハルは再び学生へと戻るのでした。