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はるのかぜ

第89章 見つからないいじめ

飛鳥へのいじめの可能性を知ったハルは、早速副担任の森本先生に相談しました。

「いじめは上手に対処しないと仕返しされたり、エスカレートするから気をつけないといけないわよ。」

「そうですよね。まずは、本人から何か聞き出そうとしたんですが、何もないって言って黙り込んじゃうんですよね。」

「そう。確かに渡辺は大人しくて控えめなタイプだから、こういうことはあまり話してくれなさそうよね。そしたら、本人から聞き出すのは諦めて、仲良くしてそうな友達に聞いてみるといいかもしれないわよ。」

「渡辺の友達ですか。」

「うん。いつも、渡辺と一緒にいる子たちとかいない?」

森本先生のその一言を聞いて、ハルはふと昨日の生徒たちが帰宅するときの様子を思い出しました。飛鳥は里香、加津、七重と一緒に帰りながらハルに声をかけたのでした。ハルはホームルーム前の掃除時間、早速、里香と加津と七重を呼びました。

「いじめですか?初耳です!誰がそんなことを。」

ハルの問いかけに七重が驚いた様に言いました。

「本人も何も言わないから、今、私も調べてるところなの。昨日、あなたたち、渡辺さんと一緒に帰ってるのを見かけたから、何か知らないかなぁって思って。」

「私たちも全く知りませんでした。」

里香も神妙な面持ちで答えます。

「そう。」

「何かわかったら、先生に報告すればいいですか?」

加津が言いました。

「うん。どんな些細なことでも構わないから教えて。」

 そのあと、ホームルームが終わると今日も飛鳥は里香と加津と七重と一緒に教室を後にしました。4人は人気のない小さな公園へと向かいました。そして、加津が飛鳥に向って言いました。

「あんたさぁ、昨日のことチクったの?今日、私たち内海に呼ばれたんだけど…。」

「いや、たまたま昨日、お母さんに背中見られて…」

「それで、あんたなんて説明したの?」

七重が飛鳥に問い詰めます。

「こけたって言った。」

「さすがよ。もし、私たちがやったなんて言ったらどうなるかわかってるわよね。」

里香はそう言って脅します。

「ところで、なおみに貸してた理科のノート、今日は返してもらえたのよね。」

今度は加津が問い詰めます。

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