テキストサイズ

はるのかぜ

第99章 掃除当番代理のハル

その日の夕方のことでした。ハルはいつものように3年5組のホームルームをしていました。

「明日の女子の体育ですけど、場所は体育館になるそうです。体育館シューズを忘れずに持ってきてくださいとのことです。じゃあ、私からの周知は以上です。何か質問ある人いますか?」

ハルの呼びかけに反応する生徒はいませんでした。

「じゃあ、終わりましょう!」

「起立!気を付け!礼!」

翼がいつものごとく号令をかけます。

「さようなら。」

挨拶を終えて生徒たちは教室を出ていきます。
ハルも教室を出て、職員室へと戻りました。そして、荷物を置くと、ハルはすぐさま例の空き教室へと向かいます。ハルは一通りの掃除道具を準備し、空き教室の掃除を始めました。

 少し日が沈みかけた頃のことでした。仕事を終え、帰宅しようとした藤ヶ谷先生は空き教室に電気が点いていることに気づきました。藤ヶ谷先生が恐る恐る中を覗くと、ハルが1人で掃除をしていました。

「内海先生、何をされてるんですか?」

「あっ、お疲れ様です。生徒たちの代わりに掃除してます。」

「そんな、先生にそこまでしていただかなくても…。」

「いえ、私のクラスの生徒が掃除をする気がないのであれば、私にも責任があります。私がやらないと気が済まないのでやらせてください。」

「はぁ…。」

ハルの気持ちは強く、藤ヶ谷先生はそれ以上何も言えませんでした。

 それから毎日、ハルはホームルームを終えては空き教室に向かいました。5人の生徒が行う掃除を、ハル1人で行うのはかなりの時間がかかり、毎日遅くまでハルは学校に残るという生活が続きました。果たして、生徒たちが空き教室の掃除を再び行う日は来るのでしょうか?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ