テキストサイズ

はるのかぜ

第102章 捕らえられていた真実

 店員は防犯カメラの録画映像を、博貴を捕まえた時間前後に巻き戻します。映像には商品を眺めている博貴の姿が映っていました。そして、次の瞬間、同じ制服姿の学生がものすごい勢いで走ってきて博貴とぶつかったのです。ぶつかった拍子で万引き犯の鞄から何かが落ちましたが、万引き犯はすぐに立ち上がり、その場から逃げ去ります。落ちたものに博貴が手を伸ばした直後、店員がやって来て、博貴の腕を掴みました。

「今のはっきり見ましたよね。明らかに神宮寺じゃない別の人物が逃げていきましたよね!」

ハルは店員に少し強めな口調で言います。

「確かに。疑って申し訳ない。」

店員は博貴に頭を下げます。

「いえ、大丈夫です。」

「よかったね、神宮寺くん。」

ハルは博貴に微笑みながら言いました。

「はい。」

「余計な時間まで取らせて悪かったね。君がやったんじゃないってわかったからもう帰っていいよ。」

店員が博貴に優しく語りかけると博貴もそれに頷きました。

「神宮寺ではありませんでしたが、制服からして本校の生徒のようですので、我々も生徒の指導は徹底し、このようなことが再び起こらないように指導に努めさせていただきます。」

藤ヶ谷先生が店員に言いました。

「よろしくお願いします。」

こうして、博貴への万引きの疑いは晴れたのでした。博貴とハルと藤ヶ谷先生は、安心してスーパー、ドリーマーを後にしました。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ