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はるのかぜ

第109章 心の声を聴いて

広島港でさやかを見つけたハルは、背後から優しく話しかけます。

「岩本さん。」

「ハル先生!」

「本当にここに来てたのね。」

「先生、本当にここ、落ち着きますね。」

「でしょ。私も大好きな場所。」

「このままずっとここに居たい。」

「気持ちはわかるよ。でも、お母さんも心配してることだし、早く帰らないと。」

「私、家には帰りたくない。」

「家で何かあったの?」

「お父さんもお母さんも私のせいで喧嘩になるの。私、あの家にはもう居たくない。」

気づくとさやかの目には涙が浮かんでいました。

「それは辛かったね。でもね、岩本さん。このままじゃ何も解決せずに、ただ、逃げるだけで終わりよ。私も一緒に行くから。」

ハルはさやかをなんとか説得し、家に連れて帰ります。家では母の満枝と父の雄一が待っていました。

「先生、さやかがお騒がせして申し訳ございませんでした。」

満枝が申し訳なさそうに言いました。

「いえ、さやかさんが無事で何よりでした。」

「だいたいお前が、きちんとさやかのこと見てないからこんなことになるんだよ!」

「何よ、日頃はさやかのことを私に任せてる癖に、こういうときに限って偉そうなこと言って!」

満枝と雄一はすぐさま喧嘩になりました。

「あの、少しいいでしょうか?」

ハルは少し強めの口調で言いました。その声に満枝も雄一も注目します。

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