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はるのかぜ

第109章 心の声を聴いて

「私はまだ偉そうなことを言える立場ではありませんが、さやかさんに何かあった時、さやかさんの話、聴いていただけていますか?こういう時は喧嘩されるより前に、まずさやかさんの話を聴いてあげるべきではないですか?」

ハルの発言に驚き、満枝も雄一も何も言えずにいました。

「岩本さん、お父さんとお母さんに、何故、今日広島まで行ってたか話してみて。」

ハルはさやかに優しく話しかけます。

「私、辛かった。私の成績が落ちたりしたら、いつもお父さんもお母さんも喧嘩して。私なんかもういなくなってしまえばいいと思ったの。」

さやかは涙ながらに訴えました。

「そんなことない。お父さんもお母さんもさやかに居なくなられたら困るから。今まで気づかなくてごめんね。」

そう言うと、満枝はさやかを抱きしめました。

 さやかが落ち着いたのを見届けてハルは岩本家を出ました。満枝と雄一も玄関までハルを見送ります。

「先生、本当に今日はお騒がせしました。」

満枝が深々と頭を下げます。

「いえ、こちらこそ、偉そうなこと言って申し訳ございませんでした。」

「いえいえ、おかげさまで、私たちが今まで気づいていなかったことに気づかされました。これからは真っ先にさやかの話を聴くことを意識します。」

雄一も申し訳なさそうに答えます。

「よろしくお願いします。では、今日はこれで失礼します。」

ハルが頭を下げると満枝も雄一も深々と頭を下げました。家出騒動で大忙しの1日でしたが、家族間の話し合いで無事に解決へと向かったのでした。

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