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はるのかぜ

第117章 一番恐れていたお言葉

教育委員会からの帰り道、ハルの目からは何度も何度も涙が溢れ出てきました。必死で止めようとしても駄目でした。しばらく歩いていると人気のない公園を見つけました。誰も座っていないベンチに座ったハルは、涙枯れるまで泣き続けました。

 湯島中学に戻ったハルは、早速職員室へと向かおうとします。すると、偶然廊下で山田校長と遭遇します。

「校長先生、ただいま戻りました。」

「お疲れ様です、内海先生。戻ってきて早々で申し訳ないのですが、ちょっとこちらにいいですか?」

そう言うと、山田校長はハルを校長室に誘導しました。

「本当にお力になれず、申し訳ない。私もできる限り内海先生に残っていただくようお願いはしたんですが、受け入れて貰えず…。」

「いえ、むしろいろいろとご対応いただいたみたいで、ご迷惑おかけして申し訳ございません。」

「とりあえず、今後の動きについてお話しておきたいと思い、お呼びしました。3年5組の担任ですが、この時期に突然担任が変わると、生徒も保護者も動揺すると思います。なので、内海先生には最後まで3年5組の担任でいていただこうと思います。」

「わかりました。」

「それから、1点だけお願いがあります。今年度いっぱいで退職となることが生徒や保護者に知られてしまうとそれはそれで混乱が生じる可能性があります。他の先生方にはタイミングを見て、私から告知したいと思います。なので、本件は時期が来るまでご内密にお願いします。」

「はい。」

ハルの教師生命がとうとう終わりを告げることとなりました。職を失う恐怖心もある中、しばらくの間は退職となることを誰にも悟られないようにしなければなりません。ハルにとって、複雑な思いで過ごす日々が続くのでした。

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