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はるのかぜ

第124章 ハルと達也、最大の冬

すっかり日が落ちて、街灯の明かりだけが所々見える公園に、達也の姿がありました。

「達ちゃん、お待たせ!」

ハルは早速声をかけました。

「ハル!」

「話したいことって何?」

「うん、実は僕、やっと再就職先が決まったんだ。」

「よかったじゃん!おめでとう。」

「ありがとう。」

「私なんかまだ内定貰えないよ。」

「僕も面接何度も落ちて、たまたま会社の同僚のお兄さんが力を貸してくれてなんとかなったんだ。」

「でも、仕事できるなら安心じゃない。」

「確かに。それからね、ここからが大事な話で、次の僕の就職先なんだけど、場所は長野なんだ。」

「えっ…!」

ハルは驚いて、それ以上言葉が出ません。

「これからは、遠く離れちゃうことになるけど、お互い連絡は取り合っていこうよ。」

「どうして、そんなに遠くに行っちゃうの?下関にもまだ就職口あるんじゃない?私、就職先探すの手伝うから。」

「僕だって、下関で一生懸命探した。でも、全部面接落ちて…。もう、いまの職場がなくなるまで日にちもなくて、仕事がなくなる状態は避けたいと思ったから決めたんだ。何が何でも長野へは行く。仕事がないと生きられないから。ハル、今までありがとう。」

そう言うと、達也は公園を立ち去ろうとしました。しかし、数歩前に進んだところで、突然、達也は前に進めなくなりました。

「行かないで。」

ハルが背後から達也を抱きしめたのでした。

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